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音楽鑑賞2/ジャズ入門

ジャズは難しい、と感じている方へ


  
 学生時代にクラシックを聴き始め、2年後にジャズの素晴らしさを知ったという人(60代男性)に取材し、ジャズの魅力をお伝えしたいと思います。

 お上品なクラシック・ファン側から見ると、ジャズは品がないとか、ちょっとセクシー過ぎるなどという評価もあります。一方で、ポップス・ファンからすると、ジャズは難解な音楽だという見方もあります。どちらも分からないわけではないのですが、その問題は置いといて、まずはジャズ・メンの格好よさから入りましょう。

 音楽論とは全く関係ないのですが、ジャズの演奏スタイルは実に格好いい。ピアノ、ドラムス、サックス、トランペット、ベース…どれも皆、絵になります。そして、誰もが個性的で、自分のスタイルを貫いている。適度な不均衡と無秩序状態の中から、まとめ上げようとする意志が働き、合体・統一と離脱・破壊を繰り返して、やがてクライマックスから突然の収束を迎える。そして、長い余韻が残る…。

 え、音楽論じゃないかって? いえ、そんなつもりはありません。言いたいことは、ジャズは自由で、国境もなく、どんな楽器でもジャズ演奏ができ、どんな音楽とも共演できて、演奏しているポーズが絵になる(つまりカッコいい)、ということです。「ロックだってカッコいいじゃないか」と突っ込みが来そうですが、あのカッコよさにはまだ子供っぽい自己顕示欲が残っていると思いませんか? 真の格好よさは、無心に音楽と格闘するその姿勢なのです。

ジャズの魅力は即興性、リズムのズレ、不協和音…


 ますます、クラシック・ファンを遠ざけてしまうような展開になりましたが、もう少し我慢しでください。ジャズがクラシックを始めとする多くの音楽ジャンルと異なるのは、その即興性(インプロビゼーション)にあります。クラシックにも、協奏曲において独奏楽器が即興的な演奏をする「カデンツァ」というものがありますが、それは時間的にも少なく、例外的な部分です。ジャズの即興演奏は本質に関わるもので、極論を言えば、即興演奏ではない部分こそが例外なのです。

 ですから、小さなセッションでは演奏者は、即興的な作曲・編曲を猛烈なスピードで続けているのです。そこに他の演奏者のサウンドが介入してきますから、お互いに影響しあって、緊張感ある未知の世界へと入っていきます。これこそジャズの真骨頂といえるでしょう。

 そうした面から見れば、あらかじめ用意された楽譜と寸分違わない演奏を何度も繰り返し、指揮者の理想とする解釈を作り上げて再現するクラシックという音楽は、ジャズとは対極にあると言えるでしょう。

 その他にジャズの魅力として、ベース、ドラムスの刻むリズムと、旋律を奏でる楽器のリズムがアドリブ(インプロビゼーション)でズレることによる、言葉で言い表しがたい「快感のようなもの」があります。また、本来はあまり美しくないはずの不協和音が、頻繁に“美しく”響き渡るのもジャズらしさで、クラシック系・現代音楽の不協和音が不安を感じさせるのとは対照的です。

ジャズを聴き始めるきっかけは?


 (ここからは都合により、取材対象者を一人称として書きます)

 私がジャズを聴き始めたきっかけは、学生時代にふとラジオから流れてきた曲に釘付けになったことからです。終わりのない螺旋階段のように長く続く、ソプラノサックスのソロ。複雑に綾を組んで川を下る、激流にも似たピアノの旋律。変幻自在なドラムスのリズム。やがてそれらが一体となって巻き起こす“騒乱状態”に、なぜかスピリチュアルなものを感じたのです。演奏が終って、私はそれがジョン・コルトレーンMy Favorite Things だと知りました。この曲は今でも、多くのジャズ・アルバムの中で最高傑作だと思っています。

 最初に好きになった曲が最高傑作だと思えるのは幸せで、クラシックではモーツァルトピアノ協奏曲第20番がそうでした。今でもモーツァルトの中では「マイNo1」で、この曲がモーツァルト最後の名曲「レクィエム」を私に引き寄せたともいえます。

 それはともかく、コルトレーンからジャズに入るのは特殊な例で、おすすめできません。今では、バッド・パウエル・トリオ「クレオパトラの夢」か、ソニー・クラーク「クール・ストラッティン」辺りがおすすめです。ジャズが最も輝いた古き良き時代の作品で、まさに古典の名作と言ってよいでしょう。また、現代ジャズから入るのもよく、エレキギターや電子ピアノが入ったセッションは親しみやすいかもしれません。時代をさかのぼっていく聴き方は、ジャズやクラシックでは普通のことです。

 ジャズがどうもとっつきにくい、難解だ、という方には、ジャズと他ジャンルのコラボレーションなど、周辺領域から入るのも一法です。また、ポップスでも、ジャズっぽい編曲の曲がけっこうありますから、そういう演奏が好きな方はジャズ好きになる下地があります。

 バロック音楽が好きな方には、相当に昔の演奏ですが、オイゲン・キケロ・トリオ「ロココジャズ」と銘打った一連のアルバムがあります。ピアニストが元クラシックの人で、「バロック→ジャズ風→ジャズらしいジャズ」と、三色最中のようにテイストが変わる演奏が楽しめます。また、バイオリンが大好きな方なら、それより新しい演奏(といっても1999年ですが…)で、寺井尚子の「ピュア・モーメント」他があります。クラシックファンにとってもジャズファンにとっても、初めて聞いたときは衝撃的です。

 最後に大事なことですが、どんなタイプのジャズであろうと、いちばん良さが分かるのはやはり生演奏です。そう一流ではなくても、狭い室内で生を聴く(というより見る)ジャズには圧倒的な迫力があります。


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