写真の造形、イリュージョン
写真と絵画が全く異なることは承知しているが、この1年間が半世紀を過ぎても影響していることをこの頃感じている。抽象画の苦手な多くの人たちは、「何が描いてあるのか、意味がわからない」という。その点、写真なら何が映っているか説明は不要だ。でも、私は今頃になって、「それが何なの?」と言われそうなものを撮りたくなってしまう。被写体の色彩や形そのものに見入ってしまうことがあるのだ。
そこで居直って、「写真の造形、イリュージョン」と題して、自己満足的に保存していた写真を公開することにした。「写真よりもミニ・エッセイのほうが面白い」と思っていただければ本望である。
「イリュージョン」―ホキ美術館

写真は入り口のガラス扉を撮ったもの。椅子に座る若い女性はもちろん絵画(ポスター)で、ガラス扉とそれに映りこんだ美術館前の風景の3つが合成されて、面白いイリュージョンとなった。
☆ホキ美術館への交通手段
🚃 外房線土気駅下車・南口より
🚌 バス5分「美術館前」下車
「空飛ぶ魔女は小人?」
小さな公園に続く長い階段を降りていた。足元を見ていないと怖い。踊り場で立ち止まってふと空を見上げると、何とほうきに乗った魔女が! しかし、よく見ると距離は近い。どうやら小人のようだ。しかも、飛んでいるというより、揺れている感じだ。
最初は幻覚かと思ったが、さすがにここまでくると木の葉だと気づく。おそらくは虫食いの激しい2枚の葉がクモの糸に引っかかり、飛ばされて宙ぶらりんになったのだ。私は夢のない人間なので、説明のつかないことは幻覚のせいにする。でも、幻覚でなくてひと安心。
「謎のスタジオ」―これぞトマソン?
※註1; 「トマソン」という言葉とその意味・概念との間に深い関係があるのかどうかは不明。「ダダ」や「ハナモゲラ語」と同様に、偶然の産物である可能性が高い。 ※註2; 写真では朱色の壁が背景の竹やぶの色と調和しているようにも見えるが、現場に立つと色彩的にもかなりの違和感があり、その点でも「評価」できる。
「桜を見下ろす屋根」
「近視眼的造形作品」

「一点を凝視する癖のある人は近視になりやすい。だから、視野を広く見ることが大事。近視の人は視野が狭い」―これは昔、ある視力回復トレーニングの先生が、眼鏡をかけている私の前で(失礼と気づかず?)言った言葉である。心の視野が狭い私は、気に入ったものを見つけると、他の余分なものが見えなくなる。その結果、生まれたのがこの写真である。ある商業施設の壁面だが、これが造形的に面白いかどうかは別にして、周囲の風物を入れて撮る意味は全くない。人間の脳は見たいものしか見ないのである。 (千葉市)
「晩秋のミラー効果」
「西遊記の鉛筆削り」

中国のシルクロード、カシュガルの旅で買った自分へのお土産である。西遊記のミニ・マスコットだと思って手に取ったら、底面が鉛筆削りになっていた。いわゆるハイブリッド商品だが、実用目的で買う人は皆無だろう。デジタル機器の上に飾って、数日は旅の思い出を楽しんでいたが、やがてその存在さえも忘れかけていた。そんなある日、カーテン越しに差し込んだ西日に照らし出されて、三蔵法師と沙悟浄が光り輝いているではないか。早速、カメラを出してパチリ。ライティング技術ゼロの私を、偶然が助けてくれた。
☆関連ページ⇒ カシュガルの旅―1988年シルクロード
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